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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

シリアよりシリアスな「財政の崖」と「政府閉鎖」

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  江戸の古典落語「風が吹けば桶屋が儲かる」をご存知ですか。「風が強い日には砂埃がまって目を悪くする、目の悪い人が増えると三味線が売れる、三味線には猫の皮を使うので、町中の猫が減る、するとネズミが増えて家の中の桶をかじる、結果、回り回って桶屋が儲かる」というわけです。

同じように、FRBが量的緩和縮小(テーパリング)を始めるとオリンピックが危ぶまれる。そのココロは、「FRBのテーパリングで世界の需要が落ち込む、世界の工場として成長を続けて来た中国で景気減速が始まる、すると中国に鉄鉱石など原材料を輸出することで成長を続けて来たブラジルや他の新興国にもかげりが見え始める、と同時に、グローバルな投資マネーは新興国から流出し、ロシアでは2014年のソチ冬期オリンピックに向けて、ブラジルでは2016年の夏期オリンピックに向けて開催の準備が進められているものの、景況感が悪くなり、工事の滞りなど支障が出ている。早くもオリンピック開催を危ぶむ声も聞こえる。」国家の威信を賭けたオリンピックだけに、こうなると笑い話ではすまないです。

もっと笑えないのが米国の「政府閉鎖」、年中行事のようになっている「財政の崖」問題です。暫定予算や債務上限引き上げといった問題は先送りされるだけで根本的な解決の入り口すら見えてきません。さらに悪いことに「オバマケア」が計上されると、一年後には国全体の予算が逼迫してとんでもないことになりそうです。

FT 記事(9月30日付)“Sequestration nation”(差し押さえられた国家)では、政府閉鎖により自動的に支出カット(automatic spending cut)の対象となる軍関係で働く人々とその家族の様子をリポートしています。連邦政府のお金が止まると、基地や退役軍人病院で働く人たちやその家族、軍人恩給受給者など、国への貢献者でありながら弱い立場の人たちに多くのしわ寄せが来ます。

米国が「財政の崖」から転落すれば、金融市場への影響は計り知れません。このところの株高も一気に下げるリスクがあります。FT記事(9月30日付) Jonathan Davis記者による “Echoes of mindless market euphoria”(思慮なき市場の熱狂)は、実体経済の回復の伴わない株高に警告を鳴らしています。記事によれば、2009年3月以降、米国では32兆ドルもの資金が株式市場に流入しました。しかし、実体経済はわずか1兆ドルしか成長していません。これは大きなバブルです。「財政の崖」からの転落はバブル崩壊を意味します。借入れ手段が尽きる10月17日の前後、株式市場は要注意です。

http://www.newsweekjapan.jp/headlines/business/2013/09/110713.php

今、日米は共に金融緩和で競合しており、私たちは日米通貨競争の最中にいます。もし米国が崖から転落したら、日本もその道連れとなります。米国は自国通貨を守り、日本は急激な円高に見舞われると予想します。もちろん、その場合には、日本のみならず世界同時株安となり、大きなショックが金融市場を襲うことになります。

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