ドル高・資源安、年末にかけての利益確定の調整か

公開日: : 大井リポート | 

私は今、ニューヨークへ来ている。NYへ移動中の機内で2本の日本映画「永遠のゼロ」と「小さいおうち」を見た。太平洋戦争に向かって行く昭和の日本の姿が市民の目線で描かれている。この時代のことを知る昭和一桁生まれ以前の世代(私の祖父母や両親、叔父叔母など)がこの世からいなくなりつつある。亡くなられた菅原文太さんのことば、「戦争をしない、国民を飢えさせない」をもう一度、かみしめるときかもしれない。

 

http://mainichi.jp/feature/afterwar70/pacificwar/data3.html

 

マンハッタンに着くと空港はものすごく混雑していて、街にはクリスマス・ムードが漂う。こんな米国とよくぞ勝てない戦争をやったものだと改めて思う。

8日の真珠湾攻撃の後、負け戦となって、日本中の主な都市は焼け野原になり、日本人は有人核実験の犠牲になった。当時の為政者の国際情勢に対する無知と無責任体制がもたらした国民への被害は何百兆円にもなるだろう。

 

それでも日本はなんとか生き残り、奇跡の高度成長を成し遂げた。そして、高度成長の奢りを持った為政者は、米国との貿易戦争に進んだ。

繊維産業から始まりニクソン・ショックまでの70年代を、日本は省エネやマイクロ・エレクトロニクス(ME)の分野で競争力を高めたが、変動相場制への移行を余儀なくされた。

そして、80年代にレーガンの時代から本格的な金融戦争へと突入する。85年のプラザ合意で日本では円高・バブルが始まり、90年代にバブル破たんで木っ端みじんとなった後に「失われた20年」が続いた。

90年代後半には日本版MEは米国のIT革命の前に大敗した。過去を振り返ってみると、日経新聞(12月7日)記事「円の”実力” 40年で最低、追加緩和で急落」の内容も納得できる。日本国民は知らない間に金融戦争で負け、生産的中産階級を失い、貧困化を強いられたのだ。

 

http://www.nikkei.com/article/DGKKASDF06H0J_W4A201C1MM8000/

 

米国の富の力から見ると、東京のくらしは慎ましく、質は高く、かなりの割安感がある。「クール!」だ。

デフレがずっと続いているし、円安になればなるほど、世界からのお得感が高まる。

かつて円高の80年代に日本人観光客がパリでエルメスのネクタイを買い占めたとか威勢の良いことをやったものだったが、今は海外からの「バイ返し」かもしれない。

 

さて、原油価格が5年ぶりの安値となり、バレル当り60ドル台まで下落している。

これは一般的には朗報で、ガソリン価格の下落で家計の可処分所得が増え、個人消費が伸びるので経済成長とってはプラスである。

しかし、じっさいの国際金融市場への影響はそれほど単純ではない。

 

金融市場では、FRBによるゼロ金利解除を見込んでドル高となっているが、注目はそのタイミングである。

米国では原油安から年末商戦の個人消費があんがい堅調だという見方と、5日に発表された11月の雇用統計で非農業部門就業者が32万千人増と市場の予想を大きく上回ったことから、先行き強気になっている。

ゼロ金利解除も来年前半までには実施と予想されている。

 

しかし、もし原油価格がさらに大幅に下落し、景気拡大からインフレ懸念が出てくるとゼロ金利解除が早まる可能性がある。

その場合、米国債10年物が売られ、金利上昇へとつながる。そうなったときには、量的・質的緩和(QQE)続行の日本とTLTRO続行の欧州では、今以上の通貨安と悪いインフレのダブルでリスクが高まるだろう。

 

原油をめぐる国際政治(ペトロポリティックス)の観点から、一説ではプーチン政権に敵対する米国がサウジアラビアを支援しているという。

OPECが今後も一定の供給量を保つならば原油価格は下落し続ける。このトレンドが長引けば、国民経済が一次産品(原油やコモディティ)に依存する新興国では通貨安がさらに進むだろう。実際、ロシア・ルーブルは対米ドルで年初来40%近く下げている。1998年のロシア危機の記憶が蘇る。

 

さらに、新興国からの資本流出が米ドル高を加速させている。

BISリポートによると、新興国は2.6兆ドルもの債券の残高があり、うち四分の三が米ドル建である。ドル高が続けば相対的に自国通貨建ての借金が増えることになる。

こうしたドル高と資源安のダブルパンチは、新興国に財政上、深刻な痛みを与えることになろう。

 

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f143bef2-7ed7-11e4-b83e-00144feabdc0.html#axzz3LLw7vhYB

 

長期的にドル高が続くかどうかに関しては、年末にかけていったん調整が入る可能性がある。

11月末から大手機関投資家は米ドルと米国債を売り、利益確定の動きを始めている。この動きは、日本市場にも影響を与えるだろう。

 

日本に関しては、8日に発表となった7-9月期のGDP改定値が1.9%減と下方修正され、リセッションが確認された。

グローバルマネーが年末にかけて利益確定に動き出している今、強気相場のうちに衆院解散選挙がアベノミクス継続・自民党圧勝という結果で終わるかどうかは微妙だ。

第一の矢(量的緩和)は成長の必要条件ではあるが、十分条件ではない。第三の矢が的に当たらない限り(成長戦略として国民や中小企業にも希望が持てるような政策がきちんと出ない限り)、自民党が勝利してもその後も強気相場が続くという期待は消える。

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