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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

いつまで続くか 中央銀行相場

ギリシャ危機や中国リスクの不安材料が顕在化するたびに、国際金融市場は一時的に混乱し下げに転じるが、それもつかの間、小康状態に戻ると、下げた分を取り戻すかのように上昇に転じる。中央銀行が量的緩和策を実施し、相場を下支えるのを見極めた市場参加者が一斉に買い進むためだ。

リーマンショック以降、各国中央銀行は大規模な量的緩和を実施し、市場にはじゃぶじゃぶの資金が溢れ、国際金融市場は「中央銀行相場」となった。こうした相場環境では、投資マネーは群集心理に准じ、「長い物には巻かれろ」とばかりに、大勢が動くほうへ流れて行く。プロのトレーダーですら、独自の合理的な価値判断に基づいて売買するのではなく、この集団行動に巻き込まれ、皆が買うから価格が上がる、価格が上昇するからさらに買うという「根拠なき熱狂」の渦に巻き込まれて行く。プロであれば計算されたリスクを取る、無益なリスクはとらないはずだが、いったん熱狂に巻き込まれるとリスクを恐れずにまっしぐらに進んでしまう。ここでひるんでは収益機会をみすみす逃してしまうと焦る気持ちに逆らえなくなる。こうした欲望むき出しの「アニマルスピリット」こそ、バブル生成の根本要因である。

一般的に資本市場の価格形成は、参加者はリスク調整後のリターンを最大化しようと合理的な投資行動をとることを前提としている。市場参加者が一方的に買い進み、価格がつり上がれば、リスクに見合うリターンが薄れ、売りが出て価格調整が起こる。

しかしながら、中央銀行相場では合理的な価値判断が形成されず、量的緩和で低リターンが当たり前となり、投資家が群れをなして収益機会を探し、同じようなポジションを取り、過剰信用で有り余った投資マネーが不動産や株式、美術品にまで流入し、右上がりの相場が展開する。IMFは、投資における非合理的な群衆行動が「ワンウェイ・マーケット(一方通行の市場)」を創出したと警告している。この群衆行動のベクトルが反対方向に向いた時、人々はパニック売りに転じ、アニマルスピリットは恐怖に変わり、相場が急に崩れるリスクが高い。買いが一年、売りが三ヶ月といわれるように、相場を上げるのには多くのエネルギーが必要だが、下げの速度は速い。一斉の売浴びせはバブル崩壊へと直結する。

FRBは年内に利上げ、英国中央銀行は年明けに利上げを予定している。中央銀行は市場を混乱させることなく、欲望と恐怖のアニマルスピリットをコントロールすることができるだろうか。

この点、シティグループのストラテジスト、マット・キング氏は、債券市場に関して大手機関投資家のポジションの偏りから、市場の流動性を阻害していると警告している(ブルームバーグ記事)。

 

http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-08-12/citigroup-something-big-and-fundamental-has-changed-in-markets

 

中央銀行相場を終わらせるのは債券市場リスクの高まりからかもしれない。

 

 

 

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