グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

マーケットは調整局面へ

お盆開け、マーケットは大きな調整局面に入っている。英米の中央銀行は量的緩和策の出口へ向かっている。リーマンショック以来続いて来た中央銀行相場が終わるとき、多少のマーケットの混乱は避けられない。

8月18日から「恐怖指数」といわれるVIX指数(S&P500の変動幅の大きさを示す)が急上昇し、市場心理の動揺は予想されていた。じっさい、週明けダウ平均株価が寄り付きから3分で1000ドル急降下し、また、その翌日火曜日の日経平均株価が日中1000円近くも乱高下し、円ドル相場も大きく変動するなか、市場参加者は方向性を失い、恐怖で固まったようだ。

わずか48時間以内に起こった急な変動に多くの投資家は追いついていけない。日本時間の夜中に米国市場で株価や為替があまりにも大きな振れ幅で急変するため、売るタイミングすら掴めない。スピードが速すぎて手当できない。ショートカバーで多少のリバウンドはあるものの、買い玉が残っている。これ以上下げてくれば追証が来て、さらに下げることになる。軟弱な相場の底がストンと抜ける局面がある。

世界の投資マネーの流れは基軸通貨の米ドル、そしてFRBの金融政策の成り行きに影響される。FRBはまさに金融の海の満ち引きを司る。イエレンFRB議長は「ゼロ金利解除」に際して、市場を秩序正しく正常化へ収れんさせて行くことに全力を挙げている。問題は、今後、市場が調整局面ではなくパニックに陥り、クラッシュに至った場合である。その可能性は高く、そうしたリスクはすべて中国に端を発するのだといわんばかりである。中国不動産・株式バブルの崩壊、人民元切り下げと週明けの中国版「ブラックマンデー」が世界同時株安の要因と報じられているのは周知の通りである。

中国も日本と同様、年金基金が株価を支える政策を打ち出している。日本の場合もGPIFや日銀が市場を買い支えている。近い将来、気がついてみれば、公的年金基金やゆうちょ銀行、日銀が大企業の大株主になっていて、日本も中国も民間企業の多くが実質的に国営化されるような不可思議な事態が起こるかもしれない。

いずれにせよ、中国リスク、急激な円高は日本の輸出企業や実体経済にも、株式市場にも大きな打撃を与える。信用逼迫が起こりうる局面において、中小企業財務の担当者は銀行との「お付き合い」で為替関連取引をしないよう心がけたい。為替がこれほどの速さで大きな振れ幅で動く場合、自殺者が出るほど損失が膨らむのが常である。お付き合いで数十億円も損失を計上した企業を筆者は目の当たりにしている。いつか通った道である。嵐の前に備えをすべきであろう。

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