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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

日銀マイナス金利の効果は?今後の相場展開は?

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先週、日銀がマイナス金利を発表し、多くの市場関係者にとってサプライズとなった。円安・株高を狙った動きではあるが、その効果はいかに。そして、日本経済を支える中堅中小企業にとってプラスなのだろうか。

 

マイナス金利の効果

マイナス金利とは、日銀の当座預金にお金を積んでおくと罰金を取られるので、銀行は一層市中にお金を回せという施策である。だが、銀行はバーゼル規制により、リスクアセットを積むには自己資本比率を上げる必要に迫られる。今でも預貸率がメガバンクで7割、信金では5割という状況では、これ以上の資金を市中に回すインセンティブがない。

銀行の預金金利は、「市場運用利回り – 経費率 – 預金保険料」で定められている。市場運用利回りが低下し、各種手数料を値上げしない限り国内の銀行は逆ザヤになる。体力のあるメガバンクは収益の機会を求めて海外進出を加速するだろうが、地方銀行や信金信組にとって収益機会は益々減少する。地域金融機関が疲弊すれば、地元の中堅中小企業へ益々資金が回らなくなる。

一方、円安・株高で業績好調の大手輸出企業には余剰資金が潤沢にあり、銀行からの借り入れを必要としていない。それでなくとも大手優良企業にとっては借り手市場であり、金利は既に十分低い。逆に輸入業者は銀行にとってリスクの高い融資先となりそうだ。輸入業者は年初からの円高で商品の価格を下げるように言われてきたが、この急な円安で輸入価格が上昇し、コストアップの分、収益が圧迫されることになる。

今回の日銀のマイナス金利策は、日本のみならず米国や世界で株価を押し上げた。ただし、そのサプライズのプラス効果は短期間しか続かないだろう。実体経済はアベノミクスでそれほど活性化したわけではなく、賃上げや来年の消費税率の引き上げを見越して慎重な経営者が、急にサイフのヒモを緩めて設備投資をするだろうか。

いずれにせよ、金融緩和政策はいわば景気の「カンフル剤」であるから、実体経済が上向かないかぎり、単なる株価浮上策で終わる。年初からの株価の乱高下を見ると、相場は投機筋の狩場となっており、一般の投資家が株や不動産で短期間に儲けるのは難しい環境である。投機的なマネーゲームでは多くの人が損失を被るだろうから、その結果、益々消費が落ち込み、実体経済が悪化するという悪循環に陥ってしまう。

本来ならば、規制緩和や産業構造の新陳代謝を進めるなど成長戦略こそが実施されるべきであろう。国民経済GDPが伸びて行かなければ、株価の長期上昇は望めない。

 

 今後の株価の見通しについて

1月20日付の大井リポートで「2月の旧正月時には一服するかもしれない」と記したが、奇しくも「マイナス金利」の効果で、一時的に円安・株高に動いたようだ。ただし、多くのマーケット関係者が「巻き戻しがコワい」と懸念するように、海外投機勢が日本株を売り進むときには急激な円高に振れるリスクが高い。
筆者は、これからは「3月決算期」をめがけた相場演出が繰り広げられると予想している。GPIFを始めとする年金基金も経団連メンバーの大手輸出企業群も、年度末の株価に気をもんでいる。「終わり良ければすべて良し」といくかどうか。

 

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