英米で高まる「悪いインフレ」への懸念

公開日: : 大井リポート | 

先週の本コラム(http://www.globalstream-news.com/ohi-report/post-18376/)で、イタリア国債発行について述べた。今週に入り、市場関係者の間では、ソブリン債バブルと債券市場リスクの高まりが意識され、インフレ警戒感も高まっている。

 

英国ではEU離脱以降、ポンドが大きく下げている。ポンド安は英国の輸出産業の価格競争力を高める一方、輸入品価格の上昇を招いている。9月の英国消費者物価指数は1.0%上昇し、8月の0.6%から大きくジャンプした。今後、英国が離脱手続を進めることから、さらなるポンド安でインフレ懸念が高まると予想されている。

 

12月の利上げが予想される米国はどうだろうか。米国では9月の消費者物価指数が1.5%上昇し、過去2年で最も大きな上昇となった。住宅価格とエネルギー価格は引き続き上昇し、特に9月にはガソリン価格が前月比5.8%上昇した。また、医療費が前年比で4.9%上昇、処方薬は7%も上昇している。食料品と耐久消費財の価格は下げている。時間あたりの労働賃金は2.6%上昇しているが、インフレ調整後は1.4%しか上昇していない。

 

現在、原油価格はバレルあたり50ドルを大きく超えてはいないが、冬場にかけてエネルギー関連価格が上昇すれば、FRBの利上げはインフレ抑制を正当性化できるだろう。ただし、実際の利上げ幅は0.25%、2017年の利上げペースもゆっくりしたものになるだろう。

 

このように、英米ではインフレが意識されている。生活必需品の物価上昇は年金生活者や貧困層にとって負担が重い。また、賃金上昇率よりもインフレ率が加速すれば、「悪いインフレ」となり、生活苦や失業が広がり政治的不安材料となりそうだ。

 

こうしたインフレ警戒のウラには、欧米の政治状況がすでにある。中間層の喪失や所得格差の拡大は、移民問題と相まって、米国ではトランプ現象、欧州では極右の台頭へつながっている。トランプ大統領候補は反エスタブリッシュメントとして人気を集めているが、じつは、トランプ現象は「アウトレイジ・ビジネス」と称される。

 

アウトレイジとは侮蔑や非道に対する激しい怒り、憤りを意味する。極論を連発することで、やり場のない憤りを持つ大衆の心をつかみ、彼らを煽動する。主張の内容が正しいかどうかよりも、激怒のはけ口になって目立ち、人気を取ることが重視される。アウトレイジ・ビジネスは新たな全体主義の始まりかもしれない。

 

米国ではどちらが大統領に就任しようとも、国内には埋めがたい大いなる分断と亀裂が生じたまま、混乱が予想される。大統領選挙まで3週間をきり、市場は様子見で、キャッシュポジションが9・11以来最高となっている。

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